2012年1月24日火曜日

そもそもクチコミに、どのような効果があるのかを記憶の仕組みから考えてみる

最近食べログのやらせ投稿が全国紙に掲載されて以降、
自分のTL上では、ステマがバズワードのようになっていますが、
ステマと言われるリスクを背負ってまで、
そもそもレビューを肯定的にすることにどのような効果があるのか
その辺りを整理してみました

ただステマはダメ、絶対です。
下記で述べるような効果があることを理解したうえで、
だからこそマーケティングに関わる人間として、
より一層倫理をもって施策は実施していかないといけないと思っています

クチコミにどのような効果があるのかを検証した
下記のような実験があります

実験内容
ある映画について否定的な評価をしている
映画ファンに、映画評論家による肯定的なレビューを見せ、
読む前に持っていた意見を答えてもらうという実験をしました。
ちなみにこの実験では、
読む前に持っていた意見を答えるよう強調しています


実験結果
被験者の半数以上が、自分は肯定的な評価をしていたと回答
そして本人達は、評価を変えたことにすら気づいていません


この手の実験に対する批判として、
「評論家が肯定的なレビューをしているのに、
否定的なレビューをすることがストレスになって
被験者は意図的に回答を変えているのでは?」
という意見がありますが、答えはノーです

FMRIという脳内を観察できる装置で観察すると、
彼らは何の疑いもなく、自分は肯定的なレビューをしていたと
勘違いをしています


なぜこんな事が起こるのか
1つの要因として、脳の記憶の仕組みが
起因していると言われています。

人間の脳みそは、特定の事象に対して
全てを一括して記憶しているわけではなく、
例えばその事象に対しての肯定的な出来事、否定的な出来事を
別々で記憶しています(←本来はもっと細かく記憶しています)
そして上記の実験のように、
今目の前で肯定的な事象が発生すると、
記憶の中から肯定的な記憶を優先的に引っ張り出します。

つまり人の記憶は、何が記憶のトリガーになるか次第で、
「ある程度条件が揃えば」コントロール可能で、

肯定的なレビューもそのトリガーの役割を果たしています。

今いちピンとこないかもしれませんが、
身近なところでもこの現象はおこっています。

例えば、実家のお母さんに「早く結婚しろ」とか電話で小言を言われると、
そう言えばいつも勉強しろと口うるさかったことを思い出し、
一方で郷土料理を宅配便で送ってくると、
「あぁおふくろの卵焼きうまかったなぁ」とか、
いつも欠かさずつくってくれたお弁当のことを思い出すという具合でしょうか

そして仮に脳内に肯定的な記憶がなかったとしても、
肯定的な記憶を勝手につくりだしてしまいます。

例えば、Aさんが悩みを抱えて精神科に訪れ、
「幼児の頃、虐待を受けたのでは?」と示唆される。
すると、脳はそのような体験がなかったとしても、
そういった記憶を創造します。
そうすることで、悩みの原因が明確になり、前進できる可能性があります。
自分の生存率を高める為なら、
脳は喜んでウソの事実を創造します

※ただしある程度の悪いレビューは販促効果があるという話があるように、
ポジティブなコメントばかりの「つくられた」トリガーには
香ばしい匂いを察知しますし、smashmediaの河野さんが仰るように
ソーシャルメデイアによって、発言の重みづけができるようになれば
トリガーの効果は相対的には低下するのでは
ないかとも思います

なぜこのような記憶の仕組みになったのか
これは私達の先祖だった、類人猿の名残と言われています。
類人猿は厳しい弱肉強食の世界で生き残っていくために、
いちいち細かいことを分析せず、
複雑さを無視して、その場で判断することが求められました。
その方が生存の可能性を高めたからです。
特定の事象に対する全ての記憶を洗い出して、
より論理的な判断をする余裕はなかったと言われています


蛇足に次ぐ蛇足
もうタイトルから蛇足に蛇足を重ねていますが、
人間って実はそんなに進化していないってことを
最近ぼんやりと考えています
先程の記憶の仕組み然りだと思います。

類人猿時代の名残と言われる、
先程の記憶の仕組みの核をなす、
大脳辺縁系が1億年以上の歴史をもっているのに対して、
対照的に論理的な思考をする、
大脳新皮質の歴史は200万年。
未だにその名残が強く残っているのは当然なのかもしれません。

この辺りは書き始めるとまたやたら長くなりそうなのですが、
だからこそ日々変化し続ける現在において、
変わったことだけでなく、変わらなかったことに焦点をあてると、
実は不可解な消費者行動も理解できてくるのかもしれない
ぼんやーり思ってるので、
次回のブログでも書こうかなと思います

今回参考にした本はこちらです